高森顕徹 / 歎異抄をひらく
from the blog 徒然
真紅のタイトルと桜の写真、そして「なぜ、善人よりも悪人なのか?」の帯に惹かれて手に取った『歎異抄』の解説本。発売前のPVを見て、関心があったこともあり、即購入しました。
「はじめに」によると、『方丈記』『徒然草』と並んで日本の三大古文と言われるのがこの『歎異抄』だそうです(『歎異鈔』とも)。西田幾多郎や三木清、倉田百三、司馬遼太郎といった日本の文豪のみならず、フランスのロマン・ロランも絶賛していたという『歎異抄』はまさに、日本人の教養として、一度は読んでおきたい本と言えるでしょう。
鎌倉時代の親鸞聖人のお言葉が書かれているということで有名な『歎異抄』ですが、世間に知られるようになったのは、実は最近のことです。
ところが、この書が世に知られるようになってから100年もたってはいないのだ。
それは500年前、浄土真宗の中興、蓮如上人が、親鸞聖人を誤解させるおそれがあると、「仏縁の浅い人には披見させてはならぬ」と封印されたからであろう。
事実、「阿弥陀さまは、悪人大好き仏だから、悪をするほどよいのだ」と吹聴する者が現れ、「親鸞の教えは、悪人製造の教え」と非難された。
その一例が"念仏を称えたら救われると教えたのが親鸞"というもので、私も高校時代、日本史の時間にそう習いました。しかしそれでは何か釈然としないものがあります。実際、口で「南無阿弥陀仏」と称えても何か変わったという実感もなく、「一体何のまじないか?」と思うよりありませんでした。そんな程度の教えではなかろう、という思いを持つ人は多いのではないでしょうか。
この本では、親鸞聖人のお言葉を通して、「念仏とは」「善人、悪人とは」「自力、他力とは」「葬式・法事の本来の意義」など、誤解されやすいところに焦点を絞って、詳しく説明されています(下記、目次の二部参照)。
本書は、聖人自作の『教行信証』などをもとに、『歎異抄』の真意の解明に鋭意努めたつもりである。
親鸞聖人のお言葉を提示して、非才ながら一石を投じたい。
教義が深いだけに未消化のところが多いと思いますので、繰り返し読んでゆきたいと思います。
Links:
「高森顕徹」全巻読破チャレンジ中!
辛口!真宗時評
たたかう音楽時評
(38)ドラマ「白夜行」と歎異抄
白夜行(山田孝之・綾瀬はるか:主演、東野圭吾:原作)
第一部
序
第一章 仏法の肝要、を言われた親鸞聖人のお言葉
第二章 親鸞聖人の鮮明不動の信念
第三章 有名な悪人正機を言われたもの
第四章 二つの慈悲を説かれたもの
第五章 すべての人は父母兄弟──真の親孝行を示されたもの──
第六章 親鸞に弟子一人もなし──すべて弥陀のお弟子──と言われたもの
第七章 弥陀に救われた人、について言われたもの
第八章 他力の念仏、について言われたもの
第九章 念仏すれど喜べない──唯円房の不審に答えられたもの──
第十章 他力不思議の念仏、を言われたもの
別序
第十一章 要約
第十二章 要約
第十三章 要約
第十四章 要約
第十五章 要約
第十六章 要約
第十七章 要約
第十八章 要約
後序
第二部
1 『歎異抄』は、いかに誤解されやすいか、その現状――ある大学教授の場合
2 「弥陀の救いは死後である」の誤解を正された、親鸞聖人のお言葉
3 「念仏さえ称えていたら助かる」の誤解を正された、親鸞聖人のお言葉
4 「善も要らない、悪も怖くない」あなた、こんなことが信じられますか? 『歎異抄』の言葉
5 「弥陀の救いは他力だから、真剣な聞法や求道は要らない」という誤解を正された、親鸞聖人のお言葉
6 「ただほど高いものはない」といわれる。では『歎異抄』の"ただ"とは?
7 「念仏称えたら地獄か極楽か、まったく知らん」とおっしゃった聖人――「知らん」は「知らん」でも、知りすぎた、知らん
8 「弥陀の本願まことだから」と、言い切られた親鸞聖人――「弥陀の本願、まことにおわしまさば」の真意
9 なぜ善人よりも悪人なのか? 「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」の誤解を正された、親鸞聖人のお言葉
10 「仏」知らずが「ほとけ」間違いを犯す元凶
11 葬式・年忌法要は死者のためにならないって? それホント?
12 「四海みな兄弟」と呼びかけられた親鸞聖人のお言葉
13 弥陀に救われたらどうなるの? 万人の問いに親鸞聖人の回答
14 念仏称えたら、何かいいことあるの? 何か呪文のように思うけど――絶対他力の念仏
15 親鸞さまは本当のことを言われる人ね。私と同じ心だもの――『歎異抄』の落とし穴
16 「南無阿弥陀仏」ってどんなこと? 「他力の念仏」の真の意味を明らかにされた、親鸞聖人のお言葉
17 自力の実態を暴き、他力の信心を明らかにされた、親鸞聖人のお言葉
18 人類の常識を破り、生きる目的を断言された、親鸞聖人のお言葉
第三部
『歎異抄』の原文